大阪市中心街で、けったいな神社寺院をまわる
【大阪市 2024.4.18】
「けったいな」という表現は、関西それも京阪神あたり限定だそうで、それならば先に「けったいな」について説明をしておかねばなりません。
一言でいうと、奇妙な、珍しい、といった意味になります。ところが具体的に「けったいな人」といった場合、「たいへん個性的な身なりの人」もあれば、「やたら自己主張の強い人」も含まれます。これらけったいな人を好きか嫌いかはそれぞれの判断に任せるべきで、けったいな人イコール係わりたくない人ではありません。
今日は、大阪市内中心部(梅田キタから難波ミナミにかけて一帯)の、けったいな社寺をまわります。あまりにも小さいとか、社殿のデザインが奇抜とか、御利益が唯一無二とか、奇妙な神社、珍しい寺院の数々です。
先にも書いたように、好みに合うか合わないかは人それぞれだと思いますので、あらかじめ地元の人に慕われていたり、SNSで大人気になっていたり、といったものを優先的に選びました。
梅田から歯神社へ
歯神社は歯神大神をまつる歯(の健康、きれいな歯並び等)のための神社ですが、神社脇にある案内板によると、淀川の氾濫の際ここにあった巨石がその濁流の歯止めとなって水没することを防いだとの言い伝えがあり、「歯止め」が時代とともに「歯痛止め」となり、歯の神様になったとまことしやかに書いてありました。
名前の奇妙さだけでなく、由緒のうさん臭さもふくめて『けったいな神社』に認定しましょう。
曽根崎通りを露天神社へ
露天神社(つゆのてんじんしゃ)は、その正式名称よりも「お初天神」の名で知られています。
創建は7世紀ごろ、しかも当初は天照大御神を祀っていたという由緒正しい神社でした。
しかしこの神社が一躍有名になるのは、遊女・お初と平野屋の手代・徳兵衛が神社の杜で心中をとげた事件をもとに、近松門左衛門が人形浄瑠璃「曾根崎心中」として世に発表したことによります。
見た目や由緒だけでは今ひとつインパクトに欠けますが、この神社は「NPO法人地域活性化支援センター」により「プロポーズにふさわしいロマンチックなスポット」として「恋人の聖地」に認定されたそうです。
間違いなく自分から売り込んだのでしょうが、心中の場をプロポーズにふさわしい場として自薦する精魂は見上げたものです。
『けったいな神社』に認定しましょう。
北浜から少彦名神社へ
北浜には大阪証券取引所があり、その南にひろがるのが道修町、むかしは薬屋が軒を並べ、その後大中小の製薬会社に成長していった場所です。
小西商店も薬屋でしたが、その後は化学製品を取り扱うようになり、接着剤のボンドをつくるコニシ株式会社として知られています。
少彦名神社(すくなひこなじんじゃ)は、日本の医薬の祖神・少彦名命と中国医薬の祖神・炎帝神農をまつる薬の総鎮守であると同時に、病気平癒・健康成就の御利益がある神社です。
こんな神社は他で見たことも聞いたこともないうえに、まるで一昔前の薬局のようにケースに薬品を並べおく、そのあまりに俗なところがたまりません。
文句なく『けったいな神社』認定です。
御堂筋を南へあるき三津寺へ
昨今は氏子あるいは檀家が激減して、社寺ともに維持管理がまことに大変なようです。
先にみた露天神社は恋人の聖地、少彦名神社は薬の鎮守をうたって集客し、御朱印やお守り、おみくじを売り、あるいは祈祷をしてそれらを収入につなげています。
そして御堂筋の名のもとになった真言宗大谷派の大寺院・南御堂ですらビルの一階部分から通り抜けできることを条件に御堂筋に面した前面を東●ホテルに売却したくらいですら、この三津寺が土地を売ることを考えたのは無理もありません。
それにしてもビルの一階部分にそっくり御堂が入ることを条件にすべての土地を売るとは、大英断です。
ここも文句なく『けったいな寺院』に認定です。
道頓堀から一寸法師大明神へ
一寸法師大明神の由来はこうです。
そもそも一寸法師はお椀の船にのり箸で漕いで京の都に向かいますが、この神社の言い伝えでは、一寸法師が生まれ育ったのは難波、そして漕ぎだしたのが道頓堀だということで、御利益は場所柄とうぜん商売繫盛、そして家内安全。
ほとんどギャグの世界ですが、ここは大阪人のお笑い好きのなせる業ということで、『けったいな神社』に認定。
※100円玉を入れる無人販売のおみくじは、ちょっと笑えます。ぜひご自身でお試し下さい。
法善寺横丁をぬけて法善寺へ
かつて京都の宇治にあった浄土宗・法善寺がこの地に移ってきます。ときの住職は常に人々に寄り添い、亡き人の供養のために千日間の念仏回向をも行います。
この近所に千日前という地名がのこっていますが、この千日念仏回向に由来するものだそうです。
それほどに人々から親しまれてきた御寺であり御不動ですから、いまも参拝する人は絶えません。その証が苔におおわれた不動尊であり、その姿には思わず頭がさがります。
『けったいな寺院』に認定します。
なんばから難波八坂神社へ
難波八坂神社はスサノオノミコトと、その妃、その子を併せ主祭神としているため御利益はなんでもござれ。しかし急激に参拝者が増えたのは獅子殿がSNSで紹介されてからです。
外国人観光客を中心にすごい人出なのですが、よく見ていると皆が記念写真を撮るだけで、参拝する人(拝む、賽銭を入れる、御朱印をもらう、お守りを買う等)の人はごく少数です。
神社の本来あるべき姿からは大きく外れてしまっていますが、有名になったことで神前結婚式や七五三の祈祷の申し込みなどが激増しているそうなので、ここも『けったいな神社』に認定しましょう。
黒門市場から生國魂神社へ
ここ生國魂神社のけったいなところは、それほど広くもない境内に摂社、末社がひしめいていること。それはすなわち祀られる神様がごまんといることを意味します。
さらに井原西鶴や織田作之助など大衆文化の担い手の像があり、いかにも庶民が気楽に気安く訪ねられる場所になっています。
言うなれば、神様を身近に感じることができる、高雅でないたいへんに俗な神社です。
『けったいな神社』に認定。
さいごに高津宮へ
高津宮(こうづぐう)は天照大御神をまつる千二百年の歴史をもつ神社ですが、御利益は「縁切り」と「縁結び」。
歴史的には「縁切り」が先で、かつては下の道と上の神社の境内とは「三曲がり半」の坂でつながっており、この「三曲がり半」を下ることで三行半(みくだりはん)に語呂をあわせて、この坂をくだれば縁が切れると言い伝えられてきました。
しかしそれで終わらないのが、大阪人。
明治時代になって、縁切りだけでは収入が得られない、すなわち神社の維持が難しいと考えたのか新たな坂をつくりました。それが相合坂。
右と左から別々にのぼり中央でピッタリ出会えば相性抜群の保証付き。こうして今では神前結婚式の注文受付に結びつけています。
ここも『けったいな神社』に認定します。
【アクセス】大阪メトロ・東梅田駅~歯神社~露天神社~少彦名神社~三津寺~一寸法師大明神~法善寺~難波八坂神社~生國魂神社~高津宮~大阪メトロ・谷町九丁目駅 / 19000歩、4h30m
【料金】拝観すべて無料
【満足度】★★★★☆