談山神社から御破裂山、そして明日香の里へ

【奈良県・桜井市 2024.4.13】
御破裂山という奇妙な名前の山があります。
多武峰(とうのみね)の山頂をそう呼ぶのですが、多武峰に関しては、神々が天からこの山の頂に降臨し、そこから天香久山(あまのかぐやま)へと下っていったという神話の世界にも登場します。
御破裂山の名の由来については、醍醐天皇(後醍醐ではありません)の時代いらい天下に異変があると山全体が鳴動したとか。その回数は35回とか、50回超とか、資料によりまちまちなのが少々胡散臭い、いえいえ少々気にはなるのですが、かつてはその鳴動を注意深く聞くための拝所のような場所まであったというのですから、やはり由緒ある神山ともいえる山なのでしょう。
その多武峰の南ふところに談山神社(たんざんじんじゃ)があります。
飛鳥時代に蘇我氏が権勢をふるっていたころ、その専横ぶりに怒りを抱く中臣鎌足(のちの藤原鎌足)が中大兄皇子を誘いひそかに談合した場所と言われており、この談合ののち蘇我氏を排除し(入鹿を暗殺、父の蝦夷は自害)ここから大化の改新が始まることになります。

神社へ

バスを降りると、屋形橋をわたる
東大門 / 社寺の入口に城郭風の門は珍しい
東大門から社殿へつづく道

桜井駅から乗ったバスは、談山神社前まで運んでくれますが、一つ手前の「多武峰」バス停で降りることをお薦めします。
屋形橋、東大門と見どころがあり、さらに社殿へとつづく苔むした道は味わい深く、歩くにしだいに期待感がたかまってきます。

後醍醐天皇が寄進したと伝わる石灯籠
案内図 / 談山神社HPより抜粋

談山神社

大鳥居を上る
大鳥居横広場の桜が満開(散りはじめ)
石段を上るにしたがい拝殿が見えてくる

中臣鎌足は蘇我氏から天皇家へと主権を取り戻した功績により、大織冠内大臣という当時の人臣としては最高位をあたえられ、さらに藤原姓を賜ります。こうして藤原鎌足として没するのですが、仏僧となっていた長男・定慧により多武峰の山頂(御破裂山)に遺骨が埋葬され、山の南ふところに寺が建立されます。
さらにその寺の境内に社殿がつくられ鎌足を祭神として祀ることになったことから談山神社へと変貌します。

拝殿、左奥に楼門がみえる

(注)
当時は神仏習合の時代だったため、仏と神、寺と神社の区別はほとんどなく、鎌足の霊を弔うための寺(菩提寺)が、いつのまにか鎌足を主祭神とした神社に変貌するような事象がおきています。
その関連で談山神社には神社にもかかわらず、本来は仏陀の遺骨をおさめる目的でつくられていた仏塔が残っています(十三重塔)

拝殿を横から見る
拝殿にあがり同方向をみる
本殿の撮影が禁止されていないので、つい一枚

本殿の撮影が禁止されていないのは驚きでした。推測するに、祀られているのが天皇家の神様ではないこと、もとは寺であったことなどが関係しているのでしょうか。

権殿(左)、十三重塔(中央)、神廟拝所(右手前)
十三重塔

談山

御破裂山へは、十三重塔横から登る
ここが談合のあった場所 / 談山

辞書でしらべたところ、ほんらい談合とは平安時代の仮名文にある「かたりあふ」「かたりあわす」にあてられた漢字からできた語で、「だんご」と読むそうです。
いま使われる業者同士の談合(だんごう)はどうやら後世にできた語です。
また談山は「かたりやま」と読みます。こうしてみると日本語というのは単なる伝達手段ではなく、言葉そのものが文化になっているように感じます。

御破裂山

御破裂山へ向かいます / どう見ても城の堀跡でしょう
御破裂山(山頂)
明日香方面へ向かいます

御破裂山は神域になっており頂にはあがれませんでした。
また展望所があるとのことで探したのですが、みつからず、木立でなにも見えません。
裏手には藤原鎌足の墓とされるものがありましたが、撮影はしませんでした。なぜと言って、新しくてちっぽけで現代に生きる庶民の墓とまるで差がない – – –
ということで御破裂山は、なんだかなあ、でした。

明日香(飛鳥)の里へ

山道というより林道を歩きます
林道というより一般道?(車は皆無)
こつぜんと城らしき石垣があらわれました
これは曲輪跡です、石垣も一部見えます
コンクリート道から山道に入ります
石仏を横に見ながら快調に歩きます
最後のさいごで
山道らしい道を下りました
明日香村が見えてきた / 後方左は金剛山、右は大和葛城山

あとは明日香村をぬけ、近鉄岡寺駅へ向かいました。

ところで下山途中に見かけた城跡ですが、帰宅して調べたところ御破裂山城なるものがあったそうなので、その遺構ではないかと思われます。

【アクセス】JR桜井駅➡(奈良交通バス)➡多武峰バス停~談山神社~談山~御破裂山~明日香村~近鉄岡寺駅 / 16000歩、3h30m
【料金】談山神社600円(御破裂山の入山料もふくむ)
【満足度】★★★★☆