妻木城は熊の影におびえながら探索することになった

【岐阜県・土岐市 2025.11.4】
今回は岐阜県の東南部を回るつもりで大阪から(交通費節約のため)新快速と普通電車を乗り継いでまずは岐阜市へ、そこからはレンタカーを借りて一路東へ、向かうのは土岐市、恵那市、中津川市。
このあたりは室町から戦国時代にはともに名門の土岐市と遠山氏がしのぎを削っていた土地です。

明智光秀が本能寺で信長を討つに先立って、愛宕百韻あたごひゃくいんの発句として「ときは今 あめが下しる 五月かな」と詠んだことは有名ですが、(このさいホントかウソかは別にして)ときは時と土岐を掛け、あめは雨と天を掛け、「時は今、土岐氏の出である自分=光秀が天下を治めるべき雨降る五月になった」と信長を討つ決意を表明したと言われています。

もし光秀が「とき」に時と土岐の意味をかさねているのであれば、たしかに明智一族は土岐氏の系譜です。名字が変わっているので宗家ではなく庶流ということになります。妻木城はその明智氏の始祖あたりの明智某がつくったとされています。
ではなぜ妻木つまぎ城と呼ばれるかというと、明智氏の庶流に妻木氏がおり、明智某はここから25kmほど北西にある明智城を居城としたため、この城は妻木某に譲ったということです。
まずはその妻木城を訪ねてみます。

※明智光秀は明智城で生まれ育ったとされていますが、彼の前半生をあきらかにする資料は存在せず、「伝」の域をでません。そんなとこからも「ときは今 – – – 」の句が天下取りの決意表明をしているとは確定しがたいと考えられます。

登城

駐車場にあった案内図より抜粋

下の「現在地」から登城道を直進し、くさび跡の岩に寄り、太鼓櫓(跡)から曲輪Ⅲ、反転して曲輪Ⅱ、曲輪Ⅰとすすみ、カメラマークのスポットBに下り、現在地に戻ってきます。

駐車場から樹林の中へ
途中は岩石だらけ
巨岩の散乱する堀切をたどって進むと、
くさび跡の巨岩に出くわします。
資料によると、堀切から除去しようとしながら
あまりの大きさ重さに断念したのではないかと。

初っ端から息をのむ光景がひろがりますが、駐車場入口にあった看板の「注意、熊の目撃情報あり」の文字が目に焼き付いており、緊張のあまり息を止めている時間の方が、感動して息をのむ時間よりも長くなってしまいます。

到着したのが夕方4時過ぎの日暮れ時、他には誰ひとり居らず。
ということは、熊が出現する可能性はかぎりなく高い?

太鼓櫓跡、三の曲輪

前方に見えるのは土塁跡か
たしかに土塁が残っていました
前方の窪みは井戸跡
堀切
太鼓櫓跡は荒れたまま
この坂をのぼって三の曲輪へ
三の曲輪
三の曲輪からの眺望
城が使われていたときには
樹木は伐採しているのですっかり見わたせたでしょう

遠方からライフル銃の発砲音がたえまなく聞こえています。
個人の猟にしても熊の駆除にしてもあまりにも発砲回数が多すぎるのではと首を捻っていたのですが、どうやら熊が人間の居住地域に出てこないよう、脅しとして発砲音をスピーカで流し続けているのではないでしょうか。

ということは、熊はこのあたりの山中に待機中ということか?

二の曲輪、一の曲輪

二の曲輪への虎口
二の曲輪から一の曲輪の石垣をみる
石垣は初歩的な野面積み
石垣上・一の曲輪から二の曲輪を見下ろす
一の曲輪 / 後方の巨岩は、(伝)旗立岩

熊の特性:
〇嗅覚はするどく犬のさらに数倍
〇聴覚はこれまた優れている
〇視覚は人並みか人以上
〇力はつよくパンチで人間を吹き飛ばす
〇穴を掘るのにも適した鋭い5本の鉤爪をもつ
〇犬歯が大きく発達し、噛みくだく力も強靭
〇時速40kmで走る
〇木登りも上手、泳ぎも得意

ということは、こちらが気づくまえに熊に先手をとられ、熊と戦っても勝ち目はなし、熊から逃げるすべもなし – – –

巨石群

一の曲輪から下ってくる
左に見えるのは帯曲輪
さらに下りてきます
これらの巨岩は、
マグマが地中で冷えて固まったときにひび割れ、
あたかも人が積んだかのように出来上がったそうです
見回すとそこら一帯巨岩だらけ
こうして元の場所に戻ってきました

もともと熊は人を襲うのではなく、臆病で自分が逃れるために人を振り払っていただけだそうです。
ところが餌が不足することから人の居住地域に出没し、食料を漁っていたところがたまたまそこに人がいて、飯を食う邪魔をするなと人を襲ったのでしょう。
熊は学習能力が高いそうです。きっと人間は自分=熊よりも弱いと知り、さらに食らいついてみたら – – –

ということは、私がここで熊に襲われて喰われてしまったら、熊は人間も喰って食えないことはないと覚え、今後はその熊は人を次々に襲うかもしれません。
喰われないうちに、さっさと退散します。

現時点では妻木城での熊被害の報告はありません。
また岐阜県全体でも人身事故は数件報告されていますが、死亡とか熊に食べられた事故はありません。
岐阜県内の熊情報は以下のサイトでご確認ください。
https://www.pref.gifu.lg.jp/page/4964.html

御殿跡

住宅地に戻るべく車を走らせていたら、
妻木城の居住区である御殿跡の前を通りました
17時をまわってすっかり暗くなっていますが、
写真だけ撮っておきました

西日本に生息する熊にかぎっていえば、はじめから人を殺傷する目的で襲いかかってくるほどには狂暴化していないとのことで、とにかくばったり出くわさないように、バックパックに鈴をつけ、いざというときのために大きな音がするホイッスルを首から下げています。
2025年秋、とにかく今は熊に要注意です。

【アクセス】レンタカーにて
【満足度】★★★★☆ (★5つ付けたいところですが、熊を警戒しながらではじっくり楽しむことができず、熟慮の末★4つとしました)