樂美術館から紅葉の醍醐寺へ

【京都市上京区、伏見区 2022.11.15】
今日は樂焼の窯元・樂家の作品をみられる樂美術館へ、「利形の守・破・離」をテーマに季節展示会を開催しているので先ずはそこを見学し、それだけで帰るのはもったいないので、やや大回りになりますが、山科からすこし南、伏見区にある醍醐寺で紅葉を堪能しようと思っています。

まず樂焼について。
茶聖といわれた千利休は、茶器(茶碗や茶釜や茶壺など)に高価な名物を使うのではなく、また豪華でなくきらびやかでなく、むしろ簡素な中に深い味わいのある精神的な豊かさをもとめて、茶の湯の世界に新しい価値観を想像します。その完成形が「侘び茶」ですが、茶碗といえばそれまで唐物とよばれるブランドものが絶対人気だったところに、ロクロを使わず手で捏(つく)ねヘラで削って形をつくり、彩色をせず、釉(うわぐすり)だけをかけて焼く、たいへんシンプルな茶碗を登場させます。これが樂焼きであり、釉のかけ方と焼き方の違いで仕上がりの色が変わり、黒樂茶碗と赤樂茶碗があります。
初代陶工は長次郎といい、もとは瓦職人だったようです。千利休と瓦職人の長次郎がどこでどうして出合ったのかは不明なのですが、ともに惹かれるものがあり文字通り二人三脚で試作をつづけ、ついに黒樂茶碗を完成させます。

紫色のマークが今回訪れた場所です。

樂美術館

樂家宅と隣接する樂美術館

樂美術館の所蔵品は、樂焼きの後継者たちが手本として常に触れることができるように、代々の作品を残してきたものが中心になっています。

今回の展示会のテーマは「利形の守・破・離」
利形とは利休の美意識をもとにした様式美
守は伝統を守り継承すること
破は伝統を破り新たな挑戦
離は守・破から脱皮し、自由な精神にいたること

代々(初代から16代目まで)の作品を、それぞれ守・破・離の段階ごとにわけて展示してありました。

晴明神社 / 左の小さな石碑には「千利休聚楽屋敷跡」

樂美術館の近くに、平安時代の陰陽師・安部晴明を祀る晴明神社があります。かつてこの神社に隣接して利休の京(聚楽第)屋敷があったそうです。
利休は堺の自宅での蟄居ののち、京都に呼び戻され京屋敷で切腹しているので、ここが終焉の地ということになります。

晴明井

晴明井は安部晴明が念力により湧出させたと伝わる井戸だとか。(外装は最近作ったもの)

千利休もこの井戸から水を汲み、茶をたて秀吉にも供したと記録にあるそうです。

一条戻り橋

晴明神社(すなわち利休屋敷)の目と鼻の先に一条戻り橋はあります。
利休切腹ののち、秀吉はここ一条戻り橋でその利休の首をさらしものにしました。(いわゆるさらし首)

醍醐寺に入る

醍醐寺総門

醍醐寺は真言宗醍醐派の総本山。
豊臣秀吉が晩年にここで醍醐の花見を盛大に行ったことから桜の名所として知られていますが、同時に紅葉の名所でもあります。

仁王門
仁王門
内より仁王門を返り見る
金堂
金堂
五重塔
祖師堂
不動堂

醍醐寺の紅葉を堪能する

日月門
日月門
鐘楼
弁天堂
弁天堂
観音堂

日月門を入って、池周辺の弁天堂、観音堂一帯は、紅葉で埋まっている印象です。

三宝院

三宝院唐門 / 菊と五七の桐
三宝院内
部屋から唐門(裏)が見える
庭園

最後に醍醐味などと使われる「醍醐」の語源について
むかしの仏典のなかに「牛より乳を出し、乳より(加工して)酪をだし、酪より生穌(しょうそ)をだし、生穌より熟穌(じゅくそ)をだし、その熟穌から(さらに手を加えると)醍醐にいたる」とあります。
これはあらゆるものの中でも最高の味とされていますが、2段階目の「酪」がおそらくはヨーグルトではないかと思われるので、さらにその先の先の先となると、はてどのような味なのでしょうか。

【アクセス】
【料金】樂美術館:入場料1100円、晴明神社:無料、醍醐寺:拝観料(伽藍と三宝院)1000円
【満足度】★★★★☆