太郎坊宮の太郎坊は天狗の名前、太郎坊天狗がまもる宮
【滋賀県・東近江市 2024.11.24】
今日は滋賀県の東近江市、赤神山(太郎坊山)の中腹に鎮座する阿賀神社(太郎坊宮)をたずねます。
唐突ですが、日本の神様の話になります。
天照大御神(アマテラス)と素戔嗚尊(スサノオ)の誓約(占い = 宇気比うけひ)は古事記にも日本書紀にも同じような内容で描かれています。
スサノオは亡き母のいる黄泉国 (よみのくに)へ行くまえに天上界にいる姉のアマテラスのもとへ挨拶にうかがいます。ところがスサノオの日ごろからの粗暴な振る舞いに怒りを覚えていたアマテラスは挨拶を拒むどころかみづから武装して対応します。
困惑したスサノオは自分に邪心がないことを証明するため、姉弟で宇気比をすることを提案し、もし自分に女子が生まれたら悪心があり、もし男子が生まれたら悪心はなく清い心であると信じてもらいたいと頼みます。
アマテラスがスサノオのもつ剣を三つに折って噛みくだき吐き出すと3柱の女神が生まれ出ます。
スサノオがアマテラスの首にかかる勾玉を噛みくだいて吐き出すと5柱の男神が生まれ出ます。
なんと荒唐無稽な話なのか、あるいは読んでいる方が女性ならばなぜ女子がうまれたら悪心ありなのかと糾弾されそうですが、古事記にも日本書紀にもそう述べられているのであって、いま書いている私じしん納得しているわけではありません、ですからそうなんだぁくらいに頭にとどめてください。
話がえらく長くなりました。スサノオの口から生まれた5柱の男神のなかの長男が、正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)というたいそう長い名の神様で、この神様が太郎坊宮(阿賀神社)に祀られているということを言いたかった次第です。
船岡山から岩戸山へ
太郎坊山ひとつ登って太郎坊宮に参詣するだけではあまりに物足りないので、近江鉄道の最寄駅からひとつ手前になる市辺駅で下車し、駅からすぐの船岡山(小丘です)をこえ、さらに岩戸山 → 小脇山 → 箕作山と縦走して太郎坊山へ。山上からくだって参詣するのは不敬かもしれませんが、そこに達するまでに岩戸山の霊場をとおるので厄払いは済ませたと堪忍してもらって太郎坊宮へ。
この予定で歩いてみます。
岩戸山の山頂には聖徳太子が岩肌に爪で13体の仏を彫ったと伝わるいかにも嘘くさい由来の、とはいえ写真で見たかぎりでは見事な摩崖仏があるはずなのですが、どこにも見当たりませんでした。
岩に接して祠がひとつあったのでその奥に秘匿されているのかもしれません。
十三仏の摩崖仏が見られなかっただけでもショックなのですが、岩戸山から先にすすむ道が通行止めになっており一帯が信仰の地ゆえロープを跨いで強引に侵入することもできず、致し方なくここでUターンすることにします。ここでいうUターンですが、宙を歩くわけにはいかないので登山口まで下山です。
太郎坊宮へ
ここに祀られる正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊はスサノオ(男神)の口から生まれ出たことになっていますが、親はというとアマテラスとスサノオとなっており父親、母親の区別はありません。
どうやら神様のことゆえ精子だの卵子だのといった医学も生理学も発生学もとびこえて、ふた方が共同でつくりあげた次代の神様と考えるべきなのでしょう。
階段を70段ほど登ると、最澄が建立したとつたわる天台宗の成願寺があります。
神仏習合の時代につくられたゆえ神社と寺が同居しているのですが、そもそもは最澄上人が社をつくろうとしたときに太郎坊天狗があらわれ建立の手助けをしたと言い伝えがあります。
主祭神の「正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊」ですが、名前からして「吾はまさに勝った、日のごとく速く勝った云々」なので勝運の神様ということで、古くは源義経、近江守護の佐々木氏、六角氏、いまではプロのスポーツ選手なんかもお参りにきていると書かれていました。
太郎坊山から瓦屋禅寺へ
紅葉の瓦屋禅寺
瓦屋禅寺の由来ですが、聖徳太子が摂津(いまの大阪)に四天王寺を建立するにあたって大量の瓦を焼くための良質な土を探していたところこの山に行き当たったとか。
土を掘りだすに際しての祈願なのか、掘り出して無事に瓦を焼きあげての御礼なのか、ともかくそういった縁でここに寺を建立したとの由緒があるそうです。
【アクセス】近江鉄道・市辺駅~船岡山~岩戸山~太郎坊宮~太郎坊山~瓦屋禅寺~近江鉄道・八日市駅 / 19000歩、4時間10分
【料金】拝観料はすべて無料 ※瓦屋禅寺は紅葉時のみ志納金500円
【満足度】★★★★☆