横浜の市街地にのこる小机城、茅ヶ崎城

【横浜市 2024.4.2】
小机城が歴史の表舞台にはじめて登場するのは長尾景春の乱においてではないでしょうか。
室町幕府が京都にありながら関東10ヵ国を統治するため設置したのが鎌倉府であり、その長官が鎌倉公方です。鎌倉公方とは役職名というよりも、京都の室町幕府将軍にたいして鎌倉すなわち関東の将軍といったようなものです。
それゆえ鎌倉公方は足利将軍家の直系が世襲しており、じっさいに執務をとりしきるのは補佐役の関東管領、その職は上杉氏が世襲していました。
その上杉氏が山内上杉家、扇谷上杉家に分かれており、さらに有力家臣である長尾氏も白井長尾家、惣社長尾家、犬懸長尾家、鎌倉長尾家にわかれ、関東管領を直接補佐する最重要ポストの家宰職を持ちまわりで務めていました。
こんな状況なら跡目争いがおきるのは必定で、案の上白井長尾家の家督をついだ景春は自分に家宰職が回ってこなかったことに不満をだき、さらに白井長尾家に家宰職が回らないことで既得権益をうしなう周りのものに後押しされ、ついに挙兵します。
このとき景春を支持する豊嶋某が立てこもったのが小机城なのですが、それだけであれば後世にさほど注目されることもなかったでしょう。
ここに太田道灌が登場します。扇谷上杉家の重臣であり、武だけでなく文にも秀で、また江戸城の原型をつくったとも伝わる有能な武将ですが、自信過剰で人を食ったような面もあり、最後は仕えていた扇谷上杉家の手で暗殺されています。よほど目に余るものがあり主家として危機感を抱いたのでしょうか。
その太田道灌がこの小机城を攻め落とすことになるのですが、その際に「小机はまず手習ひのはじめにて、いろはにほへと、ちりぢりとなる」と戯れ歌をうたっています。
小机はこの地の地名ですが、それを子供が勉強につかう小さな机にかけ、「小机城ごときは手習いはじめのように、いろはにほへと書くほどにたやすく散り散りとなる(落城する)だろう」と小馬鹿にしたわけです。
いろはにほへとの小机城を訪ねてみることにしました。

小机城へむかって

日産スタジアムの横を通って

小机城へ行くには小机駅が最寄になりますが、今夕大阪へもどる都合で新横浜駅のコインロッカーに荷物を預けました。
小机駅は一駅だけ先、わざわざ電車に乗り直すこともないので新横浜駅から歩くことにしました。

前方の丘陵が小机城址
現在は、小机城址市民の森なる公園です

小机城

小机城跡の第一の特徴は、この竹林です
もっとも当時から竹林があったのかは不明
大がかりな空堀
竹があると斜面をいかにも登りやすいので
竹林は当時はなかったものと考えるべきでしょう
二の丸広場
二の丸から本丸へと向かいます
防御と言えば堀と土塁だけ、そのぶん堀は大がかり
本丸広場

本丸は二の丸とどっこいどっこいの広さ、位置的にも横に並んでいるだけで、資料によるとどちらが主となる曲輪なのかはっきりしないそうです。

本丸から櫓跡へむかいます
天守がない代わりに、ここに遠望するための櫓があった

いろはにほへと、の内に落とせるとは思えませんが、それほどの堅城というイメージはありませんでした。
それにしても「市民の森」となっており近くに住宅がひしめいているにもかかわらず、散歩する人すら見かけませんでした。密生する竹林と木立のため、たしかに憩いの場とするにはふさわしい雰囲気ではないかもしれません。

茅ヶ崎城へむかって

小机城から6kmほどあるいて茅ヶ崎城を訪ねます。
茅ヶ崎城は横浜市の港北ニュータウンを開発中にみつけられた遺跡のひとつで、どうやら小机城の支城だったのではないかと考えられています。
小机城のその後はというと、後北条氏が勢力を拡大すると相模から武蔵へ進出してゆく拠点として整備しなおしたようで、茅ヶ崎城もやはり支城のひとつとして使われていたようです。
※鎌倉時代の執権・北条氏は相模北条氏とよばれ、北条早雲にはじまる北条氏は小田原北条氏または後北条氏として区別されています。

港北ニュータウンのマンション群を抜けて
戸建て住宅地に出ると、やがて茅ヶ崎城につきます
ここは茅ヶ崎城址公園となっています
現地にあった案内板より抜粋

茅ヶ崎城

案内板のある北曲輪(郭)
西曲輪へ向かいます
このあたりが西曲輪と思われます
中曲輪 / 本丸に相当する
中曲輪にのこる礎石跡
中曲輪周囲にのこる土塁
その土塁を下の北曲輪からみる
中曲輪から東曲輪へ / ここは空堀のあと
東曲輪

WEBでみた画像では、この東曲輪から中曲輪を見上げる容子がたいへん印象的で、それを見たさにわざわざ訪れたのですが、樹木が茂ってなにも見えません。
残念でした。まあ桜が五分咲きほどで楽しめたので良しとしておきます。

【アクセス】JR新横浜駅~小机城址~茅ヶ崎城址~地下鉄・センター南駅 / 16000歩、3h30m
【満足度】★★★☆☆